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口切り くちきり
 日本のお茶は、大半が四月下旬から五月下旬にかけて生産されます。
 特に五月は日本中が新茶でわきかえる時季ですが、私が伝え聞くと頃によると、昔は今ほど大騒ぎしなかったそうで、新茶と言えば、お得意さまに「今年の新茶でございます」などとお配りしていた程度のものだったようです。
 それは、新茶の特性によるもので、古来新茶は「新茶特有のむせ返るような若々しい精気に満ちた香りと、ちょっと顔をしかめるほどに強い苦渋味に満ち溢れたもの」であり、旬の香味を楽しめばよかったのです。
 そして、我々お茶屋の先祖は、新茶を茶壺に入れ、封印をし、秋までねかせておきます。茶壺へはそれこそぎゅうぎゅう詰めにして空気を追い出しますが、決して現代のように機械的な真空にしないこと、つまり微量の酸素を残すことで、壺の中のお茶のとげとげしさが減り、旨味とコクが乗って参ります。

 そして、その壺の封印をあける(切る)のが「口切り」です。
 特にお茶(茶道)の世界では、「茶の正月」などと呼び、「初釜」と同等、もしくはそれ以上に重要視されます。
 また、この時季は炉開きと重なるため、口切りの茶事と炉開きを併せておこなわれることも多いようです。よって、神無月亥の日に行います。