平成25年11月8日
産地問題についてのご案内
お客様 各位

 このところ、食品における様々な偽装(誤表示)が社会問題となっております。
 まず当舗よりお届け申し上げております品につきましては、全ての品が宇治茶(京都府産緑茶)であることを証明いたします。

 宇治茶の定義には諸説あり、どれが正しいと言うことは断定できませんが、当舗の自主基準として下記の通り定めております。

 まず、京都府南部産-下記(以下=①)であることを最優先として考えます。
 ① 宇治市・京田辺市・城陽市・木津川市・久世郡・相楽郡・綴喜郡

 次に宇治茶本来の性質を備えているという意味に於いて下記(以下=②)を考えます。
 ② 京都府綾部市・福知山市・舞鶴市

 上記に良品が見あたらなかった場合、下記の生産地-(以下=③)を補完的に用いることがございます。
 ③ 滋賀県甲賀市(信楽町・水口町・土山町)・三重県伊賀市(三重県でも伊勢茶は含まず)・奈良県奈良市(柳生・宇陀市・山添村)


 この12年間は、①②以外を仕入れた実績はございませんが、私の考えではより良い品を作る上で補完的に③を仕入れることに吝かではございません。
 古来、鎌倉時代初頭に京都栂尾で茶という産業が興り、①は無論のこと、③の産地の茶も、宇治に集められ、宇治茶師の手により製茶仕上げおよび合組(ブレンド)がなされ、宇治茶として主に京都・大阪、さらには機内で消費されたものです。
 従いまして、これらの地域で生産された茶を宇治茶と呼ぶこと自体は800年の歴史に裏付けられておりますし、気候風土、茶の栽培方法や製茶方法も宇治方式によるものでございます。

 一方、静岡で発祥した深蒸し製法のお茶については、宇治で生産されるお茶には不向きな製法と考えております。従いまして、たとえそれが宇治の中心部で生産加工されたものでも、「宇治茶」と呼ぶことは控えるべきと個人的に考えております。いうなれば、「京都府産深蒸し茶」とでも呼ぶなら分からないでもありませんが、いずれにしても当舗では扱うつもりはございません。

 概ね、後述の「京都府茶業会議所の見解」に沿うものですが、三重県産でも伊勢茶は含まず、また京都府産であろうとも伝統的な宇治形式の茶でない(深蒸しなど)と宇治茶とは認識しないという意味に於いて、より厳しく定義付けしているつもりでございます。
 ただ②のお茶は、京都府産という意味に於いて法的な定義付けでは、「正しい宇治茶」でございます。しかし、滋賀・三重・奈良(上述の地域)の方が気候風土・伝統的な生産方法という意味に於いて、また歴史的・経済圏的に隣接しており、上述のようにこちらの方が伝統的には「正しい宇治茶」と考えたいところではあります。

 なお、③の産地の業者さんにはそれぞれのプライドがあり、また現代では農業への補助金などに県の補助金が出るなどあり、例えば県民の税金から支出された補助金で作って、それが宇治茶(京都)とはどういうことか?などとの議論もあると聞き及んでおります。よって、近江茶・伊賀茶(時として伊勢茶に含む)・大和茶等と呼ばれることが多くなってきました。

 当舗では店頭販売の際など、こうした歴史認識に基づいたご案内を積極的にしているところでございます。
 一方、一般的な消費者目線からは、こうした伝統的な定義よりも、行政区域や法律に基づいて、わかりやすく区分することが求められる場合があることは理解しております。
 従いまして、仕入れに際しましては、①②であることを心掛け、あくまでそれだけでは品質的に劣ると判断した場合のみの補完として③を用いるように致しますが、その際には必ずそのご案内をさせて頂き、ご理解頂いてからの販売とさせて頂いております。
 
 なお、当穂で扱うお茶が上記のとおりであることを裏付け・証明する書類(生産履歴・取引履歴)は所持しておりますが、過去に「生産者の顔も見ていただこう」と試験的にこれを公表した際、異業種で茶販売を目指す者や、海外の業者からの取引依頼、更には一般消費者の方からの問い合わせや注文が直接それらの農家に殺到し、迷惑をかけたことがございました。特にお年寄りの零細農家の方々から、平穏な生活を乱された等お小言をいただいた次第です。そのような訳でこれらの公表は法的手続きにより必要と認められた場合に限らせていただくことをご理解下さいませ。


※ご参考※
京都府茶業会議所の見解
2004年03月25日(木) 22時31分
「宇治茶」の産地表示で自主基準 京都府茶業会議所(京都新聞)
宇治茶の産地表示表示基準を発表する京都府茶業会議所の役員(25日・宇治市役所)    京都府の茶生産・製造団体でつくる府茶業会議所(宇治市)は25日、「宇治茶」の産地表示を「京都・奈良・滋賀・三重の4府県産茶を府内で加工したもの」とする自主基準を決めた。4月から実施する。
 昨年試験的に導入した「府内産50%以上」の枠組みは明記せず、「府内産を最優先する」(福井正憲会頭)位置づけにとどめた。
 この日の同会議所総会で、宇治茶の定義を「京都・奈良・滋賀・三重県産茶で、府内業者が府内で仕上げ加工したもの」と決めた。
 牛肉偽装事件などの食品表示問題をきっかけに業界内で基準を策定する動きが強まったことを受けて、府茶業会議所は2003年4月、「宇治茶と呼ぶのは府内産50%以上で、ブレンドは滋賀、奈良、三重の隣接3県に限る」との自主ルールを試行的に導入した。
 しかし、府内産茶葉の不足などを理由に「製造と生産の両団体から承認を得られず、正式な決定には至らなかった」(福井会頭)という。
 今回の自主基準で府内産の占める割合について「最優先するが、具体的な数値は公表できない」としている。
 福井会頭は「生産、加工製造双方の立場を考えて決断した。気候や歴史的にゆかりの深い『4府県』という基準を明確にしたことで販売のモラルを徹底し、消費者の信頼を得られると考える」と話している。(京都新聞より)